自分らしく就活するヒントが見つかる小説『シューカツ!』
雑学
18年1月24日
「池袋ウエストゲートパーク」、「アキハバラ@deep」など、若者の世界をリアルに描くことで定評のある石田衣良が就職活動を描いた「シューカツ!」。大学生のほとんどが味わう「就職活動=シューカツ」の焦り、不安が丁寧に書かれていて、大学生の君なら、きっと共感できるポイントがたくさんある小説だろう。
就活は個人戦?チーム戦でやるのも悪くない!
大学三年の水越千晴が学内の仲間と「シューカツプロジェクトチーム」を結成するところから物語は始まる。
私自身は就活ははるか昔のことで、チームを組んで就活というのはイマドキだなあと感じる。最終的には就活は1人での戦いだとは思うが、話を読み進めると、仲間がいる就活は1人よりもかなり心強く、戦い方も千差万別であることを知れるので、チーム戦も悪くないかもしれないと思う。
例えば「自分の強みを話す」という就活でよくある質問を発表し合うというシーンがある。一度周りに話すことでそのアピールの弱点が浮き彫りになってくる。自分のことだと意外と粗が見えないが、他人のことだと見つけやすい。そのアピールが客観的に見て伝わりやすいのか、会社にとってプラスに感じるかをアドバイスしあえるのはとても有益だ。もちろん言われた時はむっとしたりもするが、改善すれば合格への一歩が近づく。 こういったアドバイスをきちんとし合える友人関係を築くのが大切だなあと、しみじみ感じるシーンだった。
インターンシップで気づいた「働くということはお金以上の価値がある」ということ
千晴は同じシューカツ仲間の恵理子とテレビ局のインターンシップに参加する。実際に社会に出て働くということは、アルバイトという立場で働いていたときよりも責任がより重く、また、誰かの指示待ちではなく、望まれていることを達成する方法は自分で考えなくてはいけないということを知る。千晴が感じているように、働くことはお金をただ稼ぐ以上のことが詰まっているのだ。自分で考えたことが結果へとつながり、それが評価された時の喜びは決してお金には変えられない。
OB訪問でのシーンもリアルだ。あるOBは、自分の企画のネタ探しにと「今大学生の間で流行っているのは何か」を千晴に逆取材したり、あるOBは、会社を辞めたいと愚痴ばかり漏らしたり、またあるOBはバリバリのキャリアウーマンで恋人よりも仕事が大事!と言っていたり、、、同じ業界で働く人でも、働き方はそれぞれなのだと知る。就活で成功しても、入れば安泰なわけでは決してなく、入ってからがむしろ勝負なのだ。
自分らしさを見失わずにいることが就活成功の秘訣
シューカツチームには、途中で就活に疲れて引きこもりになってしまうメンバーも登場する。彼は優秀すぎるがゆえに、完璧を求め、自分を追い込んでしまった。もっと大人になると、一度失敗しても、いくらでもやり直しが効くし、ただの通過点でしかないとわかるのだが、大学生から見れば新卒時の就活は、一生を左右する一世一代の勝負のような感覚なのだろう。
そんな彼を「シューカツチーム」は見捨てず、毎週交替で家を訪問して、部屋の前で雑談をすることで彼の不安を払拭させようと奮闘する。それは何も彼のためだけではなく、自分自身のためであるという。その不安な気持ちはチームメンバー全員が感じていて、彼のように引きこもってしまう状況と紙一重の状況なのだ。だからこそそういう気持ちと向き合い、乗り越えるためにも訪問しつづける。
千晴は最終面接で大失敗をしたあと「取り繕ってばかりいてもダメ、最終的には自分がどれくらい素をだせるかが大事」と気がつく。お見合いと同じ。見せかけだけで面接を突破しても会社も自分も不幸になるのだ。入社してもすぐ辞めてしまったら意味がないし、自分が一番好きな仕事、向いている仕事、求められている仕事を時間がかかってもいいから見つけることが大切なのだ。
大学生なら誰もが感じる就活への不安。その不安が少し和らぎ、自分らしく就活するヒントが見つかる一冊だ。